日別アーカイブ 2017年10月11日

投稿者:info@astro-jpn.com

脳梗塞・脳出血の原因-高血圧-

高血圧とは


TVで健康番組を見ていると何かと血圧について触れられることがありますが、血圧って何を見ているかご存知ですしょうか?

「血圧」とは、血液が流れるときに血管にかかる圧力のことを言います。
心臓がぎゅっと収縮して血液を送り出すときの血圧(収縮期血圧)を一般に「上の血圧」と呼びます。 反対に、血液が心臓に戻ってきて、心臓がふくらみ次に送り出す血液をためている間の血圧(拡張期血圧)を一般に「下の血圧」と呼んでいます。

そして、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合が高血圧とわれる状態です。

高血圧は病気になりやすいからダメと表面的にはわかっていても、「高血圧はなぜいけないか」をきちんと知っている人はどれくらいいらっしゃるでしょう。寧ろ当事者ほど気に留めていないということはありませんか?
実際、「血圧が高くても特に変わったところはなく元気に過ごせているから大丈夫。」と思っている人は多いはずです。

実はこれが落とし穴。「症状がない=危険がない」としばしば誤認されています。
心臓の病気も脳の病気は、つい最近まで元気だったのに…という人でも起こりえますし、その結果には必ず原因があると考えるべきです。
つまり、私たちは密かに忍び寄っている魔の手に気づいていないだけなのです。

 

高血圧と動脈硬化


高血圧で問題となるのは、ずばり「動脈硬化」です。
Arteriosclerosis
(左:健常な血管、中:中等度の動脈硬化、右:高度の動脈硬化)

動脈硬化とは、血管が弾力を失って硬くなる状態を言いますが、年齢が高くなるにつれ、血管の内側に生じたコレステロールなどの脂肪沈着によって血管の内腔が狭くなってしまいます。血液の通り道が狭くなると、そこを血液が通り抜ける際の圧は高くなり高血圧の状態になるのです。例えば、蛇口に繋いだホースの先を指でつまんで細くした時に指で感じる水圧をイメージしてもらうと良いかもしれません。

 

高血圧⇒動脈硬化⇒高血圧


高血圧が長く続くと、血液の圧力に耐えるために動脈の血管壁が厚くなり、血液が流れる内腔は狭くなります。また、血管が傷つくと、コレステロールなどの脂質がたまりやすくなり、さらに内腔を狭めることで高血圧が助長されるという悪循環に入ってしまうのです。

こうした動脈硬化と高血圧の影響で、血管にかかる負担が大きくなるために、血管が破れやすくなったり、詰まりやすくなったりすることがあり、脳卒中の原因となると言われています。

事実、脳出血の発症率が高くなることがわかっています。
脳出血の患者さんの46%は高血圧の治療中に、24%は高血圧で治療をしていなかった人から起こっているとの報告結果もあります(日本神経治療学会より)。

 

ストレス⇒高血圧


一般的に過度なストレスは病気に繋がるといったイメージがありますが、
実態がよく分からない分、なにかとストレスが原因と片付けられてしまっていることって多いと感じます。
それは脳卒中も例外ではありません。
このトピックではストレスがどのように脳卒中と関係があるのかを明確にしましょう。

ブレインナーシングVol.32,No.11,2016にこんな記事がありました。
離婚・死別によって脳卒中のリスクが高くなる!?
婚姻状況が健康に大きな影響を与える要因の1つであることが、一般的にも知られています。脳卒中との関連はこれまで不明でしたが、このたび、婚姻状況の変化と脳卒中発症リスクとの関連についての研究結果が日本から報告されました。この報告によると配偶者と離別・死別した人は、婚姻状況に変化のない既婚者に比べ、男女ともに脳卒中発症リスクが26%高く、とくに出血性脳卒中(脳出血やくも膜下出血)の発症リスクは男性で48%、女性で35%高くなる。 また無職の女性が離別・死別した場合、婚姻状況に変化のない有職女性と比べ、脳卒中になるリスクが3倍近く高くなっていました。さらに子どもとの同居は男女ともに配偶者を失うことによる脳卒中発症リスクを増加させる因子となっていますが、一方で親との同居は、配偶者を失うことによる脳卒中発症リスクを、男性では減少させ、女性では増加させる方向にはたらいていました。このような結果となった理由として、配偶者と離別・死別した際の生活習慣の変化や精神的ストレスの影響が考えられています。

考察で精神的ストレスについて触れられていますが、人がストレスを受けたときの行動を想像すると良いです。
過大なストレスを緩和するのに喫煙や飲酒、偏食をするという行動は一般的によく見られます。
喫煙や飲酒、偏食の習慣が慢性化することで、血圧が上昇するということは明らかになっていることから、ストレス⇒脳卒中という直接的な関係より、ストレス⇒生活上の悪習慣⇒血圧上昇⇒脳卒中という流れがあると考えられます。

 

脳卒中の原因-高血圧-を予防する


脳卒中は脳の血管の病気です。血管に負担のかかることを防ぐことで予防効果が望めます。
特に脳卒中の最大の危険因子である高血圧を予防・治療することは非常に大切だと言われています。
・1日30分以上の有酸素運動
・摂取塩分の制限
日本高血圧学会のガイドラインでは1日当たりの塩分(食塩)摂取量の目標を「6g未満」と設定しています  欧米では摂取量を「3.8g」とするガイドラインが示されているようです。

投稿者:info@astro-jpn.com

脳梗塞・脳出血の症状

脳梗塞・脳出血の症状-片麻痺-


脳卒中の代表的な症状は「 片麻痺 」
一番わかりやすいのは筋力が弱くなることですが、その他にも感覚や認知機能に関する症状が現れるのです。

なぜ片麻痺と呼ぶのでしょうか?
それを知るにはまず、脳から出た神経線維がどのように脊髄に降りて、筋肉に指令を出しているかということから理解しましょう。

手を動かそうとするとき、
大脳の表層(上の方)から出た電気信号は神経線維をたどって下行して脊髄に入り、脊髄のとある細胞に電気信号を送ります。その細胞は筋肉と連絡しており、筋肉に信号を伝えることで手の筋肉が収縮して関節を動かすのです。

右側の脳から出た神経線維は、脊髄の一つ上位の部分(延髄)で、左側に移って左半身の筋肉を支配します。
一方で、左側の脳から出た神経線維は、脊髄の一つ上位の部分(延髄)で、右側に移って右半身の筋肉を支配します。
つまり、右の脳は左半身の運動や感覚に関与し、左の脳は右半身の運動や感覚に関与しているということになります。(図の黄色➡が神経の交差を意味しています)このように左右の脳が機能的に分離していることで生じる片側の症状を片麻痺と呼んでいるのです。

皮質脊髄路

(上図:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2161より転載)

 

 脳梗塞・脳出血の症状-いびき-


脳卒中を起こすと、いびきが生じることがあります。
これは、脳が損傷を受けることで意識レベルが下がって、喉の筋肉が緩み、舌が喉の奥に落ち込んでしまうために気道が圧迫され、いびきとして症状が現れているのです。
普段いびきをかかない人が突然かきはじめた、異常なほど激しいびきをかきはじめたときは、脳卒中などの深刻な問題が隠れているかもしれません。

〈 いびきがあるとき 〉
◆とりあえず声をかけ、軽く叩いて、或いは軽くゆすって起こしてみましょう。
もし普通に目を覚ませば、睡眠のいびきだったことがわかります。
まったく反応がない場合は脳卒中が疑われますので、すぐに救急車を呼びましょう。

 

脳梗塞・脳出血の症状-頭痛-


脳卒中の中でも頭痛は脳出血の特徴的な初期症状となっています。

FAST

〈 頭痛があるとき 〉
◆ページ下部にある検査“FAST”をチェックして局所の神経症状がないか確認する。
◆血圧を測定して急激な血圧上昇がないか確認する。
◆髄膜刺激症状がないか確認する。
髄膜刺激症状:頭を水平に左右に降ると頭痛がひどくなる
直立した状態で頭を前屈する抵抗や痛みがあり、顎が胸につかない
一つでもおかしい症状があれば、すぐに病院へ急ぎましょう。

 

脳梗塞・脳出血の症状-めまい-


脳幹や小脳と言われる部位に血液を送っている血管が破裂したり詰まったりすると、めまいが生じます。
ふわふわ、ぐらぐらといった浮遊性のめまいが特徴的です。また、脳が原因の場合は、難聴や耳鳴りは伴わないことがほとんどです。

〈 めまいがあるとき 〉
◆血圧を測定して急激な血圧上昇がないか確認する。
◆頭痛、物が二重に見える、声が出せない、立っていられずふらつくといった症状がないか確認する。

おかしい症状があれば、すぐに病院へ急ぎましょう。

 

脳梗塞・脳出血の症状-しびれ-


脳卒中後の痛みとしびれは、後遺症の中でも最も多い症状です。これは、感覚を伝える神経線維や感覚情報を受け取る脳の領域のどこかに何らかの問題があることを表します。
しびれといっても、
「感覚が鈍くなる」と「ジンジン・ピリピリするような異常感覚がある」に分けられます。
特に異常感覚については、ストレスを感じることが多く、耐え難い症状です。

治療には薬の服用が有効とされますが、実際には、完全にしびれが止まることは難しい場合がほとんどです。
とはいえ、痺れは、脊椎疾患や神経絞扼といった整形外科的疾患、糖尿病などの内科的疾患、血液循環障害といった脳以外の原因でも起こる症状ですので、一度診察を受けてみても良いかもしれません。

整形外科的疾患や血液循環障害の場合は症状の程度に変動があるので、
どんなときにしびれが強まるのか、弱まるのかを知っておくと有効な治療に繋がる場合があります。

 

脳梗塞・脳出血の症状-真の後遺症とは-


まずはっきりとさせておかなければならないことは、「損傷を受けて死んでしまった脳細胞は生き返らない」という事実です。近年、リハビリによる脳の回復の可能性がTVで取り上げられていますが、現在の医療ではこの細胞死の事実は変えられません。

では脳卒中を克服した人はいったい何が治っているのでしょうか?
細胞死の話では、病巣の中心にあるような神経細胞は改善が難しいと言わざるを得ません。しかし、それ以外の神経細胞は一時的に活動が弱くなっているだけで、死滅しているわけではありません。

理解を深めるために下図を参考にして下さい。

上下2段に並んだ△は脳内の神経細胞を示しています。上側の△(一次ニューロン)→下側の△(二次ニューロン)に向かって信号が送られていると想定したとき、一次ニューロンが傷害されると二次ニューロンに信号が送られず、機能していない状態(≒神経細胞は一時的に活動が弱くなっている)となっています。図ではその中でも、機能不全のまま(Lesion)、リハビリをすることで再び接続される(Unmasking、sprouting)、再生医療で新たな細胞が二次ニューロンに信号を送る(Transplantation)と分けています。

neurorehab.

右側3つのように、一時的に活動が弱くなっている神経細胞への連絡を最大限強めることで得られる結果が“麻痺が治る”という状態です。

 

脳梗塞・脳出血の前兆-fast-


脳卒中をより早い段階で見つけるのに「FAST」という良い指標を紹介します。
脳卒中の治療は時間との闘いです。早い対処ほど良好な治療経過をたどります。

もし以下の一つでも発見したら迷わず119番に電話して下さい。
発見者の勇気がその人の未来を大きく変えることに繋がるのです。

Face 顔が非対称 片側の頬が下がっていたり、笑顔などに歪みがある
Arm 両腕を挙げたまま保てない
Speech 呂律が回らず普段通り話せない
Time 発見した時刻を確認してすぐに119番

FAST

他にもこんな症状があります。

頭部:前触れなしに強い頭痛、めまいが生じる

目:一側もしくは両側の目に突然問題が生じる

耳:突然理解ができなくなる

顔面:表情のなさ(表情筋の弱さ)

体幹:脱力、弱さ、麻痺が一側の体幹に生じる

治療までの時間が短いほど脳の損傷を最小限に食い止めることができます。

自分の行動が人を救うという意識をもって、迷わず救急車を呼んで下さい。

投稿者:info@astro-jpn.com

脳卒中の障害は実は片麻痺ではない。

脳卒中の後遺症と言えばどんな症状を思い浮かべるでしょう。

脳卒中の代表的な症状を表す言葉に「片麻痺」というものがあります。
まず、片麻痺という言葉の“片”がどこからきているかご存知でしょうか。

一言で言うと、左右の脳が機能的に分離しているから。
右脳は左半身の運動や感覚を支配し、左脳は右半身の運動や感覚を支配しています。右脳が傷害されると左半身に麻痺症状が現れるというように、脳の損傷によって身体の片側に現れる麻痺症状を俗に片麻痺と呼んでいるのです。

錐体路

(上図:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2161より転載)

片麻痺について共通理解ができたところで、タイトルに立ち返りましょう。
「脳卒中の障害が片麻痺ではない」というのはどういうことか。

麻痺が片側にだけ現れると言う人は、ある事実をとり逃しています。
それは、運動に関わる神経には、交差性線維の他に非交差性線維があるという事実です。

noncross fiber

交差性線維(上図の太い矢印)とは
一側の大脳半球(例えば右半球)から出た運動に関わる神経は、脳内を最短コースで下行し、中脳-橋を経て延髄まで到達したときに反対側(左側)に向かってそのまま反対側(左側)の運動に関わる。

非交差性線維(上図の細い矢印)とは
交差性線維と同様に延髄まで下行した線維の一部は、ここで反対側(左側)に向かわずスタートした半球と同側(右側)の運動に関わっているのです。
およそ一側の大脳半球から出た運動に関わる神経の10~15%の線維はこの非交差性線維と言われています。
つまり、一側の大脳半球は身体の両側へ神経線維を送っているのです。

脳卒中の運動障害の本質は随意運動の障害(意のままに身体を動かせないこと)により筋力低下を来していることですが、健側或いは非麻痺側と呼ばれている半身についても、筋力低下という問題をもつと考えるべきです。
実際、麻痺側は健常比で30%、非麻痺側は60~70%程度まで低下すると言われています。
これらのことから、麻痺側は「麻痺の強い側」、非麻痺側は「麻痺の弱い側」と表現すると良いでしょう。

まとめ
・運動に関わる神経には、交差性線維の他に非交差性線維がある
・脳卒中の障害は、身体の半側ではなく身体の両側の障害である

また、一側の大脳半球は身体の両側へ神経線維を送っているということは、麻痺の改善にも希望をもたらします。
これは言い換えれば、たとえ片側の脳が傷害を受けても、反対側の脳が生きてさえいれば身体の機能を補ってくれるということです。
但し、これらの神経を本当の意味で最大限に活かすには、多大なエネルギーを必要とすることは間違いありません。発症直後の自然回復を過ぎた方については、麻痺の強い側の手足を使おうとしなければ絶対に機能回復は見込めません。これまで生きるために使ってきた脳の神経間の繋がりを変化、再構成させようというのですから並大抵の努力ではありません。子供ならば好奇心を起爆剤として、周囲の環境に働きかけることで脳の神経間の繋がりを急速な速度で強めていけます。しかし大人では好奇心を強く刺激する環境が少なく、前向きに努力する以上に悲しみや喪失感が強く、高いモチベーションを保つことが難しいことが多いのです。

解決策としては、
・自分が本当に叶えたいと思うことを目標とすること
・目標に到達するための段階的な課題を設定すること
・動画や数値で記録を残し、日々の変化を追えるようにしておくこと
・効率のみを優先せず、改善させたい手足を動かす機会を逃さないこと

 

皆様のリハビリに少しでもお役に立てれば幸いです。

ありがとうございました。