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脳卒中の障害は実は片麻痺ではない。

脳卒中の後遺症と言えばどんな症状を思い浮かべるでしょう。

脳卒中の代表的な症状を表す言葉に「片麻痺」というものがあります。
まず、片麻痺という言葉の“片”がどこからきているかご存知でしょうか。

一言で言うと、左右の脳が機能的に分離しているから。
右脳は左半身の運動や感覚を支配し、左脳は右半身の運動や感覚を支配しています。右脳が傷害されると左半身に麻痺症状が現れるというように、脳の損傷によって身体の片側に現れる麻痺症状を俗に片麻痺と呼んでいるのです。

錐体路

(上図:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2161より転載)

片麻痺について共通理解ができたところで、タイトルに立ち返りましょう。
「脳卒中の障害が片麻痺ではない」というのはどういうことか。

麻痺が片側にだけ現れると言う人は、ある事実をとり逃しています。
それは、運動に関わる神経には、交差性線維の他に非交差性線維があるという事実です。

noncross fiber

交差性線維(上図の太い矢印)とは
一側の大脳半球(例えば右半球)から出た運動に関わる神経は、脳内を最短コースで下行し、中脳-橋を経て延髄まで到達したときに反対側(左側)に向かってそのまま反対側(左側)の運動に関わる。

非交差性線維(上図の細い矢印)とは
交差性線維と同様に延髄まで下行した線維の一部は、ここで反対側(左側)に向かわずスタートした半球と同側(右側)の運動に関わっているのです。
およそ一側の大脳半球から出た運動に関わる神経の10~15%の線維はこの非交差性線維と言われています。
つまり、一側の大脳半球は身体の両側へ神経線維を送っているのです。

脳卒中の運動障害の本質は随意運動の障害(意のままに身体を動かせないこと)により筋力低下を来していることですが、健側或いは非麻痺側と呼ばれている半身についても、筋力低下という問題をもつと考えるべきです。
実際、麻痺側は健常比で30%、非麻痺側は60~70%程度まで低下すると言われています。
これらのことから、麻痺側は「麻痺の強い側」、非麻痺側は「麻痺の弱い側」と表現すると良いでしょう。

まとめ
・運動に関わる神経には、交差性線維の他に非交差性線維がある
・脳卒中の障害は、身体の半側ではなく身体の両側の障害である

また、一側の大脳半球は身体の両側へ神経線維を送っているということは、麻痺の改善にも希望をもたらします。
これは言い換えれば、たとえ片側の脳が傷害を受けても、反対側の脳が生きてさえいれば身体の機能を補ってくれるということです。
但し、これらの神経を本当の意味で最大限に活かすには、多大なエネルギーを必要とすることは間違いありません。発症直後の自然回復を過ぎた方については、麻痺の強い側の手足を使おうとしなければ絶対に機能回復は見込めません。これまで生きるために使ってきた脳の神経間の繋がりを変化、再構成させようというのですから並大抵の努力ではありません。子供ならば好奇心を起爆剤として、周囲の環境に働きかけることで脳の神経間の繋がりを急速な速度で強めていけます。しかし大人では好奇心を強く刺激する環境が少なく、前向きに努力する以上に悲しみや喪失感が強く、高いモチベーションを保つことが難しいことが多いのです。

解決策としては、
・自分が本当に叶えたいと思うことを目標とすること
・目標に到達するための段階的な課題を設定すること
・動画や数値で記録を残し、日々の変化を追えるようにしておくこと
・効率のみを優先せず、改善させたい手足を動かす機会を逃さないこと

 

皆様のリハビリに少しでもお役に立てれば幸いです。

ありがとうございました。

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