ブログアーカイブ

投稿者:info@astro-jpn.com

腕の役割

腕・手の役割は物品の把握以外に、離す・操作・探索・持ち運び、指折りで数える

歩くときの腕の振り、支え、ジェスチャー、バランスをとる等様々であり、生活上非常に重要な意味をもっています。

 

図に示すように、手指が実際の生活で使えるためには、それを空間に位置づけるために肩・肘・手関節が自由に動かせなければなりません。特に腕の根元に当たる肩甲骨、上腕を固定しておく肩関節の周囲筋の強化は必須項目です。

肩甲骨の固定筋:僧帽筋、菱形筋、前鋸筋

肩関節の固定筋:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋

 

肩の筋力の必要性を理解する良い方法があります。

水の入ったコップを用意して、水平に肘を伸ばしてコップを持った状態とその位置から肘を曲げてコップを口に近づけた状態を比べてみて下さい。

間違いなく、肘を曲げてコップを口に近づけた状態の方が楽に感じるはずです。

水平に肘が伸びていると腕のテコが長くなった分、コップを持ちあげる力がより多く必要とされるというわけです。

 

脳卒中の上肢に対する筋力強化における注意点は、むやみやたらと強度を上げ過ぎないこと。それは言い換えると、鍛えたい部分とそれ以外をきちんと分け、目的とする箇所に適した負荷に留めること。腕の能力を超えるほどの力が求められると誰でも全身に力が入ってしまうものですが、それが過ぎると痛みを誘発したりや協調性を欠いた運動を助長してしまいます。

また運動中は筋肉が強張り過ぎないよう、適宜リラクゼーションを挟んで筋肉を弛緩させることも大切です。

投稿者:info@astro-jpn.com

ロボット技術から学ぶ省エネ歩行

もし、今より楽に長い距離を歩けるようになったら嬉しくありませんか?

 

本稿では、

本来、歩くという動きが如何に力に頼らずに行われているか

 

ということをお伝えしていきます。

 

 

まずは下の動画をご覧ください。

0:25から実際のロボットの動きを観ることができます。

 

このロボットの一番の特徴は、

 

❝無動力❞ = 特別な動力源がない

 

という点です。

 

このロボットの基本構造は、人間と同様に骨盤、太もも、脛、足部にあたる支柱をもつにも関わらず、人間の筋肉にあたるモーターを備えていません。

(余談)名工大の佐野教授にお尋ねしたところ、

膝に当たる連結部にも動力源はなく、ダンパーが入っているだけだそうです。なので、体重をかける軸がズレれば簡単に膝折れもします。

 

それにしても、脚の運びが非常に自然で理想的な動きをしていますね。

 

これを人間に応用するに当たり、ポイントは4つあると考えます。

①足の着く位置

②身体が進行方向に移動する速度

③上半身の安定性

④足の踏み返し

 

細かな動きを能動的に行うのが難しい、運動麻痺を患った方の歩きに対しては、脚を持ち上げることを強いることよりも、もっと受動的で自然な動きを求めることが実用歩行獲得の近道ではないでしょうか。

投稿者:info@astro-jpn.com

腕を持ち上げる土台

(www.reco.co.jp/fun02.pdfから引用)

 

なぜ腕が持ち上げられないのか?

 

という疑問には、そもそもどのようにして持ち上げているのかを知らなければなりません。

 

腕を挙げる動きは、一見一つの関節の動きによって成り立っているようですが、少なくとも肩甲骨、肩関節の動きが確保され、肩の動きに連動して肩甲骨が上方に回旋してくれる必要があります。(図4)

 

腕はショベルカーのアームのような動きに例えることができます。

操縦席が肩甲骨、アームの根元が肩関節と見たときに操縦席が土台となってどの方向にアームを伸ばすかを決めています。ショベルカーと身体では肩甲骨と肩の運動の自由度は逆転しますが、概ねこんなイメージです。

 

肩甲骨が上方に回旋するというのは、腕の骨の近位端(上腕骨頭といいます)がはまっている肩関節の受け皿が上方を向いてくれることを意味します。

適度な回旋の目安は、肩甲骨の下部で下方に尖がった部分(下角といいます)が、腋の中心から脚に向かって真っすぐ下した垂線まで移動すること。

 

脳卒中の後遺症がある人に「腕を挙げて」とお願いすると、多くの方は、肩をすぼめるように肩甲骨を持ち上げながら何とか腕を挙げようとされます。

肩関節を固定できれば肩甲骨の動きだけで60度は持ち上げれる(図4右)わけですから、これは極々自然な反応だと思います。さらに身体を反対側に傾けてもう少し高く、とされる場合もあるでしょう。

 

もしも、肩甲骨が上ではなく下方回旋したままの場合、上腕骨頭は、関節の受け皿に支えられずにぶらさがった状態となり、肩関節を覆う小さな筋肉群(腱板筋群)に大きな負担を強いることになります(Miharaによる報告)。また腕を持ち上げる時の腱板筋群の筋力発揮には肩甲骨の安定化が必要である(Asano)と報告があります。

 

加えて、肩甲骨の動きに機能障害がある場合には、腕を挙上する時に肩甲骨の下方回旋が確認されることが多く、肩関節の上部において詰まるような感覚を伴って腕の持ち上げが制限されることがあります。ここで言う❝詰まるような運動制限❞では、上腕骨頭と肩甲骨の間で、軟部組織が挟み込まれている可能性があり、過剰に腕の持ち上げ運動を続けると痛みや腫れを引き起こすことがありますので、十分に注意が必要です。

 

肩甲骨が動くこと > 腕が挙がること > 手が挙がること というように根本から動かしていくことがコツになるかもしれません。

 

自身で強化するとすると、四つ這いや正座で肩幅に広げた手を前方に着いて、地面を前上方に向かって押すという方法があります。腕を100度くらい挙げられるのであれば床ではなく壁を押して頂くと良いと思います。

投稿者:info@astro-jpn.com

練習量を無理なく増やす方法

「訓練量の増加が脳卒中片麻痺の能力低下の回復を促すことに有効」
これは数々の研究報告から明らかに効果が実証されています。
言い換えれば、
適切な部位の筋肉を動かして反復練習できるかが機能回復の鍵だということです。
しかし、
思ったように動かない身体を使って反復回数をかせぐことは、
集中力を必要とする分、続けることが難しいというのが実際のところではないでしょうか。
そこで参考にしたいのが、この報告。
脚の麻痺筋に対する機能的電気刺激やペダリング運動は歩行能力の向上や、筋
再教育に有効であり、通常のリハビリテーションに加えて行うことが勧められ
る(グレードB)
→麻痺改善に対して電気刺激治療器の使用、自転車駆動運動を薦めている

電気刺激治療器

電気治療とは、皮膚に電極パッドを貼り、電気刺激を流すことで筋肉を強制的に働かせることができるものです。
それは、麻痺筋肉の不使用による筋肉の萎縮を防ぎ、筋力を維持、向上させることを助けます。
・使用器具
低周波治療器 (家電量販店で使用されているものでも可)
過去に経験した脳卒中の患者さまで市販の電気刺激を使って機能回復をお手伝いしたことがあります。
ただし、必ず商品の詳細から使用する上注意をよく確認してから実施して下さい。
使ってはいけない人がいます →心臓ペースメーカー装着者や重篤な心疾患を持つ人、妊婦さん など
・方法
刺激様式:途切れのない持続的な刺激
刺激量:関節が動き始める≦ (最適な刺激量) ≦痛みの出始め
    ある程度自力のある人は弱め
    全く力の入らない人は強め
<手首を起こす筋肉を刺激したい場合>
<爪先を挙げる筋肉を刺激したい場合>
「電気治療 足背屈」の画像検索結果
応用:筋肉が収縮している時、どこにどんな感覚がありますか?
   電気刺激を行った後は、その時の感覚を再現するように動かしてみましょう。
参考となる商品:

ペダリング運動

自転車トレーニングは、交互性、対称性のあるリズミカルな脚の動きを促すという点で歩行能力改善に有用と言えます。
非麻痺側の脚で麻痺側の脚のペダリング運動を補助することができるというのが特徴です。
訓練量が大事という点を振り返ってもらうと、非麻痺側の脚ばかりを使ってしまうのはナンセンスです。
ペダリング運動では脚の動きを目で見て感じやすいからこそ、左右対称の動きを目指して動かしてもらいたい。
・使用器具
エアロバイク
・設定
負荷(重さ):一定
回転数(rpm):Step1:30回転 Step2:60回転 Step3:90回転
       徐々に早い運動に慣れると良い
速度やペダリングの重さを調整することで筋力トレーニングも持久力トレーニングもできる
という点では自主トレーニングに適しています。
投稿者:info@astro-jpn.com

36%

36%
いったい何の数字だと思いますか?
実はこれ、
脳が変化すると分かっている練習量に対する現在行われているリハビリ量の割合を示す数字だったのです。
皆さんは「反復練習って実際何回やったらいいの?」
って思ったことはありませんか?
動物モデルで調べられた神経の適応能力では、毎日数百回の運動練習を繰り返す必要があると言われています。
例えば動物の脊髄損傷では、約1000〜2000ステップが毎日、30分間のトレッドミルで行われ、後肢の歩行を改善する。
それに対して、アメリカで行われた脳卒中リハビリテーションで現在行われている練習の量、繰り返し回数の調査では、1回のリハビリにつき平均歩数は357回(95%CI = 296〜418回)しか行われていない。
動物実験1000~2000stepsに対する実際にリハビリ現場で提供されている歩行量357stepsの割合
=36%
また、健康なラットおよびサルに対しての運動課題が脳をどのように変化させるかという調査では、
手の課題を400-600回の反復/セッションを行うことで変化した結果を得ています。
これらのことから、
人においても、神経学的に無傷の対照被験者および脳卒中被験者は、学習すべき特定の運動課題を何百回も繰り返す必要があるということになります。
目安は400-600回
気が遠くなる方もいらっしゃると思いますが、
脳を変化させるというのは、それほどまでに集中して練習する必要があるということなのです。
〈参考文献〉
脳卒中後のリハビリテーションで提供される練習量は、動物モデルに比べて小さい。現在リハビリ中に行われる特有課題の練習量は、脳卒中後の機能を促進するために必要な神経再編成を推進するのに十分ではない可能性がある。
Lang CE, Macdonald JR, Reisman DS, Boyd L, Jacobson Kimberley T, Schindler-Ivens SM, Hornby TG, Ross SA, Scheets PL. Observation of amounts of movement practice provided during stroke rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil 90(10):1692-1698, 2009.
1セッション420回以上の練習で上肢の自発的使用頻度が増加する。
Han CE, Arbib MA, Schwighofer N. Stroke rehabilitation reaches a threshold. PloS Comput Biol.2008 Aug 22;4(8):e1000133.
投稿者:info@astro-jpn.com

これを読めばわかる!脳卒中後の回復過程

あすとろ
皆さん、手足の麻痺ってどうやって回復していくか知ってますか?
Y太
えっ!ほっといたら自然と治ってくるんじゃないんですか?
あすとろ
確かに、ある程度自然に回復してくるのを待つ面もありますが、完全回復したければそんな受け身ではいけません。
Y太
病気から復活するってそんなに甘くないんですね。
あすとろ
そうなんです。今回はその回復の過程について説明しますね。

 

早速ですが、この図を見て下さい

グラフの左側から右側に行くにつれて回復が進むことを示しています。

回復が進む中で筋力は弱い→強いに移り変わっていきます。

しかし、もう一つ見覚えのない言葉があると思います。

 

それは筋トーヌスといって「筋肉の張り」を意味します。

実は、この筋肉の張りが高過ぎず、低過ぎず適正に(基線に)戻ることが麻痺の回復の指標の一つとなっています。

発症後の経過は、

下がって、すごーく上がって、下がって真ん中 (↘ ↗ ↗ ↘ ➡)

もう一度

下がって、すごーく上がって、下がって真ん中 (↘ ↗ ↗ ↘ ➡)

 

脳梗塞/脳出血を起こすと、

一時的に脳がシャットダウンして意識が低下するとともに、筋肉の張りが失われます。(Ⅰ)

通常、意識の目覚めとともに筋肉の張りが高まっていくのですが、

重度の麻痺の場合は筋肉は、張りがなかなか高まらずにボテッと弛緩したまま経過します。

意識の目覚めと共に、筋肉の張りが高まってくるこの時期(Ⅱ~Ⅲ)は、

脳が混乱、興奮状態にあるので、高次脳機能障害の症状も激しく、

まるで人格が変わったかのように感じることも少なくありません。

身体のコントロールも効かないので、非常に強いストレスを感じます。

しかし、次第に脳の興奮が落ち着き始め、

身体の動きのコントロールや筋肉の張りが本来の筋肉の状態に戻っていきます(Ⅳ~Ⅵ)

 

リハビリでは、この回復の波に遅れないよう、

且つできるだけ波を小さくして基線に近づけるように支援していきます

これは急性期だろうと、回復期だろうと、維持期だろうと変わりありません。

下がり過ぎたものは上げていく

上がり過ぎたものは下げていく

 

 

このように、脳卒中においては、その時期毎に症状が変化するため、状態に応じて治療方針を修正していかなければならないのです。

 
投稿者:info@astro-jpn.com

脚の麻痺)歩けるようになりたいなら、とにかく立って歩いて!

起立─着席訓練や歩行訓練などの下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)

脳卒中のリハビリのガイドラインに掲載。グレードAは最も根拠として強いものを指します。脚の麻痺)
トレーニングには5つの原則があり、その一つに “特異性の法則”というもの があります。
簡単に言うと、
野球がうまくなるには野球に関連する動きを練習をしないといけないように、
歩くのが上手になりたければ筋力トレーニングだけでなく、歩く練習を併用して行う必要があるよ、ということです。
手の練習をしていても歩けるようにはなりません。
またもう一つ大切なことは、しっかりと運動量を確保すること。
弱った脳の神経回路を目覚めさせるには、10歩や20歩では到底足りません。
せめて300歩は歩いて欲しいです。
あなたは十分に歩いてますか?
脳力を高めるには刺激量を増やす必要があります。
『可愛い子には旅をさせよ』
 意味:我が子が可愛いなら、親の元に置いて甘やかすことをせず、
   世の中の辛さや苦しみを経験させたほうがよいということ。
日本にも昔からこういった諺があるように、成長にはある程度の負荷を与えないといけない。
生物には元来、環境に適応する能力があります。
人は環境に学び、人格を育み、その社会に属し、どう生きるかを考えるのです。
また、
経験したことのあるスポーツはできるけれど、
未経験のスポーツはからっきしということは
誰しも経験したことがあるでしょう。
これも刺激量の差から生まれたものといえるのではないでしょうか?
(参考論文)
1)Kwakkel G, Wagenaar RC, Twisk JW, Lankhorst GJ, Koetsier JC. Intensity of leg and arm training after primary middle-cerebral-artery stroke:a randomised trial. Lancet 1999; 354:191-196
2)Dean CM, Richards CL, Malouin F. Task-related circuit training improves performance of locomotor tasks in chronic stroke:a randomized, controlled pilot trial. Arch Phys Med Rehabil 2000;81:409-417
3)Richards CL, Malouin F, Wood-Dauphinee S, Williams JI, Bouchard JP, Brunet D. Taskspecific physical therapy for optimization of gait recovery in acute stroke patients. Arch Phys Med Rehabil 1993;74:612-620
4)van de Port IG, Wood-Dauphinee S, Lindeman E, Kwakkel G. Effects of exercise training programs on walking competency after stroke:a systematic review. Am J Phys Med Rehabil 2007;86:935-951
5)French B, Thomas LH, Leathley MJ, Sutton CJ, McAdam J, Forster A, et al. Repetitive task training for improving functional ability after stroke. Cochrane Database Syst Rev 2007(4):CD006073
投稿者:info@astro-jpn.com

脳卒中を発症後、一日でも早く越えたい壁

「麻痺は改善しない。」
 
「私は何もできない。」
 
あなたは、そんな風に思ってしまっていませんか?
 
我々専門家は、患者様を長く見てきているので、
 
精神状態をどう保つかが麻痺、ひいては生活水準の改善に大きく関わってくることを理解しています。
 
身体が麻痺した事実は変わりません。
 
他人事だから言える、そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 
確かに過去を忘れるのは、気持ちの上では難しいと思います。
 
でも、今すべきことは過去を後悔することではありません。
 
今からとる行動が現状を打破する唯一の手段。
 
一日でも早くそれに気づいて、過去より未来に目を向けてほしいのです。
 
 
また、
 
どれだけ効果的なリハビリの方法を知っていたとしても、
 
どれだけ回復の可能性が残っていたとしても、
 
「何をやってもダメだ。」
 
と思い込んでしまっては、回復のための行動ができないのです。
 
実現可能性の高い綿密な計画があっても、何も行動しなければ何も生まれないのと同じです。
 
待っているだけでは望む結果は生まれない。
 
脳卒中のリハビリは日々進化しています。
 
身体の動きをサポートする科学技術も日々発展しています。
 
情報や手段を常に前向きに取り入れて改善を目指して行動すれば変化は訪れるものです。
 
 
 
だから、アストロでは
 
「目標を設定する」何のために努力するのか?
 
「根拠を明らかにする」今やっているトレーニングは何のために行い、どのような変化を生むのか ?
 
「自主トレーニングを具体的に伝える」次回までの宿題のようなものです。今やるべきことを伝えます。
 
 「常に手段を更新する」同じ手法では必ず頭打ちがくる。常に変化し続け、試せることは全て試す。
 
この4つのステップを通して、意欲・集中力を保ちながら効果を最大化するプログラムを組んでいます。
 
 
そうして麻痺の改善を目指す一方で、
 
麻痺した身体だけでなく、全身の能力の底上げをお手伝いすることで生活をワンランク高くする
 
それがアストロのサービスです。
 
 
 
皆さんは、
 
「麻痺が改善したら、何をしてみたいですか?」
 
投稿者:info@astro-jpn.com

脳梗塞・脳出血の症状

目次
脳卒中の症状
1 脳卒中の症状-片麻痺-
2 脳卒中の症状-いびき-
3 脳卒中の症状-頭痛-
4 脳卒中の症状-めまい-
5 脳卒中の症状-しびれ-
6 脳卒中の症状-真の後遺症とは-
7 脳卒中の前兆-fast-
1 脳卒中の症状-片麻痺-
脳卒中の代表的な症状は「 片麻痺 」
片麻痺.png
一番わかりやすいのは筋力が弱くなることですが、その他にも感覚や認知機能に関する症状が現れるのです。
なぜ片麻痺と呼ぶのでしょうか?
それを知るにはまず、脳から出た神経線維がどのように脊髄に降りて、筋肉に指令を出しているかということから理解しましょう。
手を動かそうとするとき、
大脳の表層(上の方)から出た電気信号は神経線維をたどって下行して脊髄に入り、脊髄のとある細胞に電気信号を送ります。その細胞は筋肉と連絡しており、筋肉に信号を伝えることで手の筋肉が収縮して関節を動かすのです。
右側の脳から出た神経線維は、脊髄の一つ上位の部分(延髄)で、左側に移って左半身の筋肉を支配します。
一方で、左側の脳から出た神経線維は、脊髄の一つ上位の部分(延髄)で、右側に移って右半身の筋肉を支配します。
つまり、右の脳は左半身の運動や感覚に関与し、左の脳は右半身の運動や感覚に関与しているということになります。(図の黄色➡が神経の交差を意味しています)このように左右の脳が機能的に分離していることで生じる片側の症状を片麻痺と呼んでいるのです。
neuron.png
2 脳卒中の症状-いびき-
脳卒中を起こすと、いびきが生じることがあります。
これは、脳が損傷を受けることで意識レベルが下がって、喉の筋肉が緩み、舌が喉の奥に落ち込んでしまうために気道が圧迫され、いびきとして症状が現れているのです。
普段いびきをかかない人が突然かきはじめた、異常なほど激しいびきをかきはじめたときは、脳卒中などの深刻な問題が隠れているかもしれません。
〈 いびきがあるとき 〉
◆とりあえず声をかけ、軽く叩いて、或いは軽くゆすって起こしてみましょう。
 もし普通に目を覚ませば、睡眠のいびきだったことがわかります。
 まったく反応がない場合は脳卒中が疑われますので、すぐに救急車を呼びましょう。
3 脳卒中の症状-頭痛-
脳卒中の中でも頭痛は脳出血の特徴的な初期症状となっています。
symptom.png
〈 頭痛があるとき 〉
◆下記のFASTをチェックして局所の神経症状がないか確認する。
◆血圧を測定して急激な血圧上昇がないか確認する。
◆髄膜刺激症状がないか確認する。
  髄膜刺激症状:頭を水平に左右に降ると頭痛がひどくなる
         直立した状態で頭を前屈する抵抗や痛みがあり、顎が胸につかない
一つでもおかしい症状があれば、すぐに病院へ急ぎましょう。
4 脳卒中の症状-めまい-
脳幹や小脳と言われる部位に血液を送っている血管が破裂したり詰まったりすると、めまいが生じます。
ふわふわ、ぐらぐらといった浮遊性のめまいが特徴的です。また、脳が原因の場合は、難聴や耳鳴りは伴わないことがほとんどです。
〈 めまいがあるとき 〉
◆血圧を測定して急激な血圧上昇がないか確認する。
◆頭痛、物が二重に見える、声が出せない、立っていられずふらつくといった症状がないか確認する。
おかしい症状があれば、すぐに病院へ急ぎましょう。
5 脳卒中の症状-しびれ-
脳卒中後の痛みとしびれは、後遺症の中でも最も多い症状です。これは、感覚を伝える神経線維や感覚情報を受け取る脳の領域のどこかに何らかの問題があることを表します。
しびれといっても、
「感覚が鈍くなる」と「ジンジン・ピリピリするような異常感覚がある」に分けられます。
特に異常感覚については、ストレスを感じることが多く、耐え難い症状です。
治療には薬の服用が有効とされますが、実際には、完全にしびれが止まることは難しい場合がほとんどです。
とはいえ、痺れは、脊椎疾患や神経絞扼といった整形外科的疾患、糖尿病などの内科的疾患、血液循環障害といった脳以外の原因でも起こる症状ですので、一度診察を受けてみても良いかもしれません。
整形外科的疾患や血液循環障害の場合は症状の程度に変動があるので、
どんなときにしびれが強まるのか、弱まるのかを知っておくと有効な治療に繋がる場合があります。
6 脳卒中の症状-真の後遺症とは-
まずはっきりとさせておかなければならないことは、「損傷を受けて死んでしまった脳細胞は生き返らない」という事実です。近年、リハビリによる脳の回復の可能性がTVで取り上げられていますが、現在の医療ではこの細胞死の事実は変えられません。
では脳卒中を克服した人はいったい何が治っているのでしょうか?
先ほどの話では、病巣の中心にあるような神経細胞は改善が難しいと言わざるを得ません。しかし、それ以外の神経細胞は一時的に活動が弱くなっているだけで、死滅しているわけではありません。
この一時的に活動が弱くなっている神経細胞への連絡を最大限強めるられるかどうかが、脳卒中患者の予後を決めると言えるでしょう。
kouishou.png
7 脳卒中の前兆-fast-
脳卒中をより早い段階で見つけるのに「FAST」という良い指標を紹介します。
脳卒中の治療は時間との闘いです。早い対処ほど良好な治療経過をたどります。
もし以下の一つでも発見したら迷わず119番に電話して下さい。
発見者の勇気がその人の未来を大きく変えることに繋がるのです。
Face 顔が非対称 片側の頬が下がっていたり、笑顔などに歪みがある
Arm 両腕を挙げたまま保てない
Speech 呂律が回らず普段通り話せない
Time 発見した時刻を確認してすぐに119番
fast.jpg
投稿者:info@astro-jpn.com

<脳卒中の後遺症>6カ月の壁なんて気にするな!

 

一般に脳卒中後の回復は、発症から1か月程度はスムーズな回復を示し、その後の回復はやや緩やかになります。

そして発症後3カ月で85%程度の回復が得られるとされ、6カ月の時点で残る障害はほぼ後遺症と考えられています。(=プラトー)

 

プラトー

<意味>自身の能力を高め、更なるスピードで成長していくことが難しい段階。

   学習や作業の進歩が一時的に停滞する状態。

 

このようにプラトーは改善の限界を示す言葉ではありません。

 

ここで分かって頂きたいことは、

「これまでと同じ戦略では同じ結果しかもたらさない」

ということです。

つまり、プラトーは違う方法を試す時期なのだと考えてみるべきです。

 

図の曲線からもお分かり頂けるように、最初の3ヶ月というのは、脳卒中の回復の変化が生じやすい時期とされています。

なぜならこの時期は、

脳の腫れが解け、途絶えていた血行が再開し、脳組織の自然修復がおきる時期だからです。抑え込まれていた機能が再起動することになるので、急激に回復するというわけです。治って当たり前の時期です。

この時期のリハビリはどちらかと言えば悪化させない、過度の安静を避け体力を低下させないことが目的です。

 

そして、およそ発症後3カ月以降の脳の自然修復を終えてからの回復は、傷つかずに残った組織が、失われた機能を補うように神経の連絡路が作り変えられることに依ります。リハビリは特にこの「神経の連絡路の作り変え」を促進するのに効果を発揮すると言われています。

 

脳の回復の可能性が6ヶ月までに留まっていたのは、リハビリの方法論が確立されていないかったことやリハビリサービスが充実していないことも原因の一つだと私は考えます。

 

脳や身体は、トレーニング戦略を変えることでさらなる改善が得られる可能性をもっており、様々にあるすべての障害が一律に改善しないということはないのです。

 

実際、何人もの脳卒中の患者さん達を支援させて頂いている経験から、治るべき人が治しきれずに生活されているという現状は嫌というほど見てきました。それを少しでも何とかするために、私はこの公的介護保険外サービスという分野で闘っています。

またその経験値を後押しするかのように、退院後のいわゆる維持期と言われる時期においても、さらなる回復を望めることは多数の報告から明らかになっています。

 

一つ障壁を挙げるとすれば、退院後も「リハビリを継続すること」があるのかもしれません。

 

地域での理学療法サービスを利用して理学療法を継続することが脳卒中患者の機能回復を増強する、私はそう感じています。

(Holmqvist LW, Von Koch L, Kostulas V, et al: A randomized controlled trial of rehabilitation at home after stoke in southwest Stockholm. Stroke 29: 591-597, 1998)