痙縮spastisityって何?
筋肉が素早く引き伸ばされたときに生じる伸張反射が強まることを主体する筋肉が緊張した状態。
平たく言うと、
触れるなどちょっとした刺激でも筋肉が引っ張られたと勘違いして勝手に縮こまってしまう状態。
脳卒中を経験した多くの方が、痙縮に悩んでいる
海外の報告では, 脳卒中の35%以上, 重度の頭部外傷の75%の患者が痙縮の症状があると報告されています.
筋肉が過剰に緊張した状態にあると、どんなことが起こるのでしょうか?
・身体が固まって、自由に動かせなくなる。
・足に症状が出ると、歩けなくなる。
・最悪の場合、痛みが出たり、関節そのものが固まってしまうこともある。
脅かすようですが、中には深刻な事態になる人もいるのです(>_<)
痙縮の原因
大元は脳血管障害が原因です。その症状が悪化する要因について、興味深い論文が出ています。
2005年海外の論文で、「不使用(Disuse)」が痙縮悪化の大きな要因であると報告されました。
例えば、手に麻痺、こわばりがある方が、麻痺した手を使わずにいると痙縮の症状が一層強まってしまう
ということをこの報告から学ぶことができます。
なぜそのようなことが起こるのでしょう?
まず脳がダメージを受けると、2つの重大な変化が生じてしまいます。
それが、
A運動麻痺 と B脊髄・筋肉の脱抑制 です。
A(動かせないことによる構造的な変化)
運動麻痺によって筋肉・関節を動かしにくくなる。
血流が滞る →こわばる
B(神経系の機能的変化)
脊髄・筋肉の抑制コントロールを失うことで、筋肉の収縮反射が過敏になる
筋肉が無意識に縮む →こわばる
これらの変化が出たことで、
「動かしにくい」を理由に動かさないでいると、不使用が不使用を生む悪循環に陥ってしまう。
これが痙縮が悪化する理由です。
だから、麻痺した身体をしっかり使っていかなきゃいけないんやって思って下さい。
<脊髄・筋肉のコントロールを失うとは?>
痙縮のある方の特徴に以下の3つがあります。
・意識して動かそうとすればするほど力が入り筋肉を強ばらせて動かし難くなる
・不慣れで困難な動作であればあるほど筋肉が強ばる
・歩行や階段昇降などの不安定な動作時で特に強く強張る
実は、この3つは脊髄・筋肉のコントロールを失っていることと関係があるんです。
病気に関わらず誰でも、心理的に緊張する場面、不安定な場所、重いものを持つとき、あくび、くしゃみ
などによって身体は一時的にこわばるものです。
健常であれば、脳からのコントロールが効いているのでそれほど強く現れません。
しかし、脳出血や脳梗塞を起こすと脊髄や筋肉は過敏に反応するので、関節が曲がったり伸びたりする動きとして目に見えて現れるんです。
痙縮と拘縮の違い
痙縮と間違えやすい状態として、「拘縮」という状態があります。
拘縮とは?
関節を構成する軟部組織(血管や筋組織、神経組織など)が変化し、可動域制限を起こした状態のこと。
つまり身体を動かさないことで組織が線維化して、関節が固まってしまうことを拘縮と呼んでいます。
痙縮と拘縮の見分け方は簡単!
例)肘を曲げる筋肉が痙縮を起こしているとします。
それが痙縮であれば、反対の手の力でゆっくり肘を伸ばせばジワジワと伸びてきます
一方、それが拘縮であれば、同様にゆっくり肘を伸ばしても伸びてきません。
痙縮の治療薬
痙縮に対するリハビリテーションはガイドラインで推奨されているものをご紹介致します。
Ⅰ.痙縮の内服薬
片麻痺の痙縮に対して、ダントロレンナトリウム、チザニジン、バクロフェン、ジア
ゼパム、トルペリゾンの処方を考慮することが勧められる(グレードA)。
Ⅱ.その他の治療薬、治療法
顕著な痙縮に対しては、バクロフェンの髄注が勧められる(グレードB)。
2. 痙縮による関節可動域制限に対し、フェノール、エチルアルコールによる運動
点あるいは神経ブロック(グレードB)およびボツリヌス療法(保険適応外)(グ
レードA)が勧められる。
(グレードA:行うよう強く勧められる グレードB:行うよう勧められる)
※但し、有効だとする報告が数多く上がっているグレードAの方法でも、必ずしも期待する変化を得られるとは限りません。
一定期間試してみて、効果がなければ違う方法を試すという粘り強い姿勢が大切です。
痙縮のリハビリテーション
改善に必要なことは「筋肉を動かす 」 こと。
過去は、筋力トレーニングをすることはタブーとされていましたが、常識が変わってきています。
痙縮筋をしっかり使う、反復して体重を支えるというトレーニングは、筋のこわばりを増悪させることはなく、むしろ随意運動の回復とともに痙縮の改善が期待できる。
大まかにはこの2つで(↑※)に対処します。
・意図的な運動 (コントロールに重きを置いた運動)
①単一の関節だけで動きのコントロールを学ぶ
②他の関節と組み合わせる
③重さを付加する
◎レベルに合わせてどんどん実際の場面で使っていく。
例)肘の曲げ伸ばし → 腕を持ち上げた位置での肘の曲げ伸ばし → 錘をつけてor物を持って肘の曲げ伸ばし
・阻害要因を減らす
①ストレッチ
無意識に麻痺手足を動かせるようになるまでは、高頻度に行わなくてはなりません。
②こわばる場所以外からの影響を最小限にする。
例) 歩くときのふらつきを改善する。
足指が踏ん張りやすい状況を整える。(インソールや矯正用品)
力まないで行える方法をとる。
最後までお読み頂き有難うございました。