早速ですが、この図を見て下さい
グラフの左側から右側に行くにつれて回復が進むことを示しています。
回復が進む中で筋力は弱い→強いに移り変わっていきます。
しかし、もう一つ見覚えのない言葉があると思います。
それは筋トーヌスといって「筋肉の張り」を意味します。
実は、この筋肉の張りが高過ぎず、低過ぎず適正に(基線に)戻ることが麻痺の回復の指標の一つとなっています。
発症後の経過は、
下がって、すごーく上がって、下がって真ん中 (↘ ↗ ↗ ↘ ➡)
もう一度
下がって、すごーく上がって、下がって真ん中 (↘ ↗ ↗ ↘ ➡)
脳梗塞/脳出血を起こすと、
一時的に脳がシャットダウンして意識が低下するとともに、筋肉の張りが失われます。(Ⅰ)
通常、意識の目覚めとともに筋肉の張りが高まっていくのですが、
重度の麻痺の場合は筋肉は、張りがなかなか高まらずにボテッと弛緩したまま経過します。
意識の目覚めと共に、筋肉の張りが高まってくるこの時期(Ⅱ~Ⅲ)は、
脳が混乱、興奮状態にあるので、高次脳機能障害の症状も激しく、
まるで人格が変わったかのように感じることも少なくありません。
身体のコントロールも効かないので、非常に強いストレスを感じます。
しかし、次第に脳の興奮が落ち着き始め、
身体の動きのコントロールや筋肉の張りが本来の筋肉の状態に戻っていきます(Ⅳ~Ⅵ)
リハビリでは、この回復の波に遅れないよう、
且つできるだけ波を小さくして基線に近づけるように支援していきます。
これは急性期だろうと、回復期だろうと、維持期だろうと変わりありません。
下がり過ぎたものは上げていく
上がり過ぎたものは下げていく
このように、脳卒中においては、その時期毎に症状が変化するため、状態に応じて治療方針を修正していかなければならないのです。
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